ぬくぬくとした暖かさ
着心地も柔らかく、
けれど鋼の鎧を着ているかのように
強くなった気分になり
僕は昼も夜も何時の季節も
このジャケットを着続けていた
ただ僕は
温かさに甘え
自分の体を鍛えることをしなかった
いつのまにか表面では見えないジャケットの下の肉体には
たくさんの脂肪
太った肉体はジャケットを苦しめていたんだ。
いつとれてもおかしくないボタンの叫びに
僕は気づかず、それでも心地良さに甘え続けた
“もうダメだよ”
ボタンが取れた。
そして
ジャケットはどっか新しい着用者のもとへ去っていった。
裸になった僕は
肥えた肉体を曝け出し、6月の北風、凍てつく寒さに震え
梅雨の濁った雨の下
新宿の夜
孤独に殺されそうになった。
6月の雨はあまりにも冷たすぎるよ
ただ、、、、
そんな寒さを忘れさせる過重な労働は
今の僕にはむしろ救いであり、
労働することをにこれほど感謝するとは思わなかった
なによりも
周囲の人達は暖炉のように暖かく
“独りじゃないんだ”、
死にゆく体を暖めてくれる
心の底からの涙を噛み締めた
ホントにありがとうと
いつかはこの寒さも
太りきった体を引き締めてくれるのかもしれない
いつかは雨も寒さも
晴れるかなぁ
少しだけど
歩ける気がするよ